豪州で医者に診てもらう【3】バルクビリングとは?


前述のように、GP(一般開業医)は患者の診察代として、「国が定めた診察料金」に加えて「追加診察料金」を患者に課すことができますが、課さなくてもかまいません。

課さない場合、GPは「国が定めた診察料金」だけを患者から徴収することになりますが、この「国が定めた診察料金」は、メディケア(オーストラリアの国民健康保険)、つまりは国のお金で100%カバーされる対象です。

ですので、GPが「国が定めた診察料金」だけを患者に請求するときは、患者にはお金を出させずに国に直接請求するのが慣わしのようです。

このような、患者が自腹を切らずにGPに診てもらう清算方法をオーストラリアでは「bulk billing(バルクビリング、一括請求)」とよびます。

医者が診た患者の診察料金を一括して国に請求するので、そう呼ばれるでしょう。医者は「追加診察料金」を患者に課すことによって儲けを出すことができるのに、どうしてバルクビリングをするのか。

一つ目の理由としては、患者の手間を省くためです。医者が患者に「国が定めた診察料金」を支払わせたとしても、患者がメディケア(国の機関)にいけばその料金は「全額」患者に戻ってきます。

だったら国から直接料金をもらってしまっても同じことだという考えです。医者からみれば、患者が払うにしても国が払うにしても支払いを済ませてもらえれば変わりはありません。



医者←←←←←①←←←←←患者←←←←←②←←←←←国

①患者が医者に診察料金を払う
②後日患者に返金

というお金の流れを

医者←←←←←←←←←←←←←←←←←←←←←←←←国
(患者を介入させずに国から直接払ってもらう)

にしているのがバルクビリング。


二つ目の理由として、診察費回収の焦げ付きを防ぐねらいがあります。患者のなかには経済的に苦しく診察費の支払いを滞らせている人たちもいます。彼らが支払うのをあてにするより、国に直接請求したほうが安全だという考え方です。

三つ目の理由として、バルクビリングをする医者に対しては国がある程度の報酬を与えるしくみになっていることがあります。その報酬がもらえれば「追加診察料金」はいらない、と考える医者もいるのでしょう。

全体としてバルクビリングをする医者の数は減少傾向にあるようです。やっぱり「追加診察料金」をとったほうが利益になるということでしょうか。

かかりつけのGPは「バルクビリングは無料という意味だよ」と以前話していましたが、メディケアの保険料は収入に応じて徴収額は異なりますが国民の収入から天引きされているので、無料ということではありません。バルクビリングには私たちのお金、税金が使われているのです。